まえがき
阪大での研究室学生時代は所属研究室の教授(池田先生)は各方面に多忙でした。教授直下のグループではなく研究グループが違った(浅井Gr)ため、月1度のミーティングで発表者が居るときに先生に会うくらいの感じでしたので研究内容でディスカッションした記憶がありません。しかしながら、教授の研究思想みたいなところは過去の学会誌・論文誌を通して色々と勉強をしていました。また、研究室の忘年会などでも色々と話をして池田先生の考え方を吸収しています。その中でも池田先生は後進に向けたメッセージを色々と残していますので、それらをもって勉強になっていました。
一応注記しておくと、池田研は第一志望の研究室であり、研究が面白そうということだけでなく、授業で質問時の対応で印象に残って研究室選択しているので、私にとって魅力の高い先生でありました。そのような池田先生が他の方面からも色々と頼られるのは必然のように思います。研究室所属時の2006年にはSICEの会長をされてますし、その後阪大の副学長にもなられていますので池田先生は研究だけでなくURAも含めて多方面の仕事をされている感じでした。
この記事で触れたいのは後進・後学の研究者へのメッセージです。私自身は44歳であり、職業研究者としての人生の半分まで来ています。ここから先の研究者としての人生は限られているというか、何か方向性も決まってきていて、例えばいきなり理学系の研究をするといった大転換はないと思っています。しかし、今研究者になったばかりの方、なろうとしている方、なる可能性がある方にとっては先輩研究者の色んな意見を取り入れることで(色んな場面で)良い判断ができるものと思います。私自身、上述のように池田先生の考え方を記事を通して得たという認識があり、今も活きていますので、解説記事的なものから学ぶことは有用だと思っています。
私自身の若手研究者向けのメッセージ(立ち振る舞い方というより実務的な話)はすでに以下の記事で書いています。(こちらも、読んで頂ければ幸いです。)
若手へのメッセージ @ J-STAGEの解説記事
そのため、この記事は、J-STAGEから収集した若手研究者へのメッセージ記事の紹介をしていきます。私自身が制御の研究者であるため、そのセンサにひっかかった記事ということで制御屋目線のものが多いことはご了承ください。記事数は合計36記事あります。トピックは「制御関係その①」、「制御以外の分野の記事」、「制御関係その②」の3部構成です。
J-STAGEは日本政府(JST)がやっているサイトで無料公開している記事が多くあります。
制御関係その①
池田先生:
まずは、恩師の池田雅夫先生です。上述の通り、後学者に向けたメッセージを多方面に残されています。広島大学の田中先生がインタビューされた記事がこちらになります。
「制御工学にかける思い-人類と地球のために」大阪大学名誉教授池田雅夫先生(研究者の横顔)
また、研究者には限りませんが制御工学のフレッシュマンに贈る言葉として以下の記事がまとめられています。
フレッシュマンに贈る言葉 -人類と地球になくてはならない制御工学-
最後にもう一つ池田先生の記事をピックアップすると次のものがあります。
このほか、書籍「多変数システム制御」におきましても、メッセージ性のある内容があります。
森先生:
東工大名誉教授の森政弘先生の記事はこちらです。私は以下の記事が結構好みです。
章タイトルを抜粋すると「未来は外側にはない」「異なる方向のハーモニー」「内側から湧き出すものを」が挙げられます。
私はロボコンはやったことないですが、面白そうと思ったことは多々ありますので、少しズレた内容ですがもう一つ挙げておきます。
黒沢氏:
連続時間有限整定制御の発案者であり、東芝の技術者であった黒沢氏の記事です。学生時代に影響を受けた記事として追記しております。
制御の特集号:
上記の森先生の記事は、小特集の中の一記事ですが、この小特集自体が面白い取り組みであり、1977年と50年近く前の特集記事(計測と制御)ではありますが、良い特集号でしたので(若手へのメッセージから多少脱線はしますが)これも挙げておきます。これは、「今後の計測制御の学問と技術」というタイトルで、
の記事内にもあるように、
「この試みの狙いとするところは(a)計測・制御のあるべき姿や今後の方向について会員はどのように考えているか,また,学会活動を推進している人達と現場第一線で活躍している人々との間に,この点に関して意識のギャップはないであろうか,(b)委員会活動,会誌,論文集など現在の学会の活動内容は会員の期待に適切に応えているか,(c)会員の間から建設的な提言は得られないであろうか,などについて把握したいということである.本小特集の試みは上記(a)~(c)に関して会員がふだんからいいたかったこと,あるいは漠然と頭に抱いていたことを自由に開陳していただく場をセットしたもので,われわれはこれに対して確かな手ごたえを感じたと思っている.」
という通常、記事執筆依頼を委員会が行い解説記事が書かれるという流れではなく、自由に投稿できるものとして募集した記事ということです。熱い思いのこもった記事がたくさんあります。以下は当該特集の編集後記です。
特集号の記事一覧は次のリンクから確認できます。50年前ということもあり、知っている名前はほとんどありませんが、今であってもかなり刺激的な記事が多いです。
計測と制御(1977.11)
本特集の記事タイトルの一部を抜粋して併記しておきます。一部記事には加えて章タイトルの一部も入れておきます。
制御の研究, 制御の学問は自然科学にはなれないか, 研究論文と校閲, 制御やシステムに関する学問のたくましい発展
理外の理, 失敗しない理論の行方はどこに?, 実践なき理論の価値はどこに?
制御技術の新しい思想, 計測と制御は水と油か, 計測と制御の新しい考え方
計測制御技術の問題点, 理論と実際のギャップについて
会誌のあり方についての一提言, 独創性と総合性, 学会への要望事項, 理論と実験の融合を望む, 学問の問題点と進歩, 現代システム制御理論批判序説覚書, 理論家と技術家の協力, 現代制御理論と応用のギャップ雑感, 学会に望む
制御以外の分野の記事
五十嵐先生:
J-STAGEで見つけた記事として、北海道大学の五十嵐教授のものです。研究分野が異なっても刺さるものがたくさんあります。章タイトルが独特だったので章タイトルをいくつか抜粋します。
自分の研究生活を振り返って : 若い人たちに伝えたいこと(挑戦者からのメッセージ,<特集>創薬研究に役立つ病態モデル)
2章:落ちこぼれても起死回生の夢を諦めない
4章:師との出会いを大切に:研究のオリジナリティとは
7章:国際会議での自己主張,英語は下手でも
9章:先は誰にもわからない,わからないことを楽しもう
内山先生:
研究者応援エッセイとして展開されている記事です。
渡辺先生:
1985年の記事です。主に論文を書くという視点での若手向け記事です。
関氏:
企業のトップに聞くという記事です。
杉山先生,白坂先生:
夢対談という枠組みでの記事で対談形式のものです。
若手研究者に必要なものは?,研究生活って大変なもの?など
制御関係その②
若手へのメッセージかどうかはさておき、制御の若手研究者向けには種々の学会の成り立ちなどについて色々な文章に触れたことがよいと思っていますので、ピックアップした記事を置いておきます。
座談会:1975
座談会:2021
次世代システム制御理論とは何か:序論 (jst.go.jp)
次世代システム制御理論とは何か:本論 (jst.go.jp)
座談会:2022
木村先生:
新先生:
荒木先生:
原先生:
潮先生:
システム工学と向き合った40年余りを振り返って (jst.go.jp)
足立先生:
制御工学はどこからきて,どこへいくのだろうか? ~データとモデル~ (jst.go.jp)
西村先生:
真なるダイナミクスの追究による次世代システム制御理論を目指して (jst.go.jp)特集
大谷氏:
I-PD制御方式とその設計法―北森俊行氏 (jst.go.jp)
北森先生:
特集 計測自動制御学会50年史
計測と制御 (jst.go.jp) 2011.8-9
若手研究者に向けたメッセージをまとめた記事は以上になります。