この記事ではむだ時間項を用いた連続時間有限整定制御について説明します。制御工学では連続時間線形時不変系では指数関数的な信号の振る舞いをします。これに対して、むだ時間項を利用することで有限時間で目標値に整定する有限整定制御が可能となります。関連記事リンクは最下部に置いています。
また、むだ時間については以下の記事でまとめています。
連続時間有限整定制御のための条件
ここでは、連続時間有限整定制御を紹介します。むだ時間を用いることで、時間的にずらした信号を生成することができます。そして、この作用を利用することで所望の整定時間秒以降の偏差信号を零化することができます。むだ時間を利用した有限整定制御は、フィードフォワード制御的にもフィードバック的にも構成することができますが、ここでは簡単なフィードフォワード的な制御手法について紹介します。
有限制定制御問題を扱うために、信号のラプラス変換の構造をむだ時間を含む以下の形で与えます。
\begin{equation}
Q(s)=Q_0(s)+\sum_{j=1}^N Q_j(s)e^{-L_j s}
\end{equation}
例えば、簡単な例としてとし、との構造を以下のように与えます。
\begin{equation}
Q_1(s)=\frac{b_{0(f-1)}s^{f-1}+...+b_{00}}{\prod_{i=1}^{f}(s+a_i)}, \\ Q_1(s)=\frac{b_{1(f-1)}s^{f-1}+...+b_{10}}{\prod_{i=1}^{f}(s+a_i)}
\end{equation}
ここで、共通の安定極がであり,が有限時間秒で整定するための十分条件は以下の式で与えられます。
\begin{equation}
(s+a_i) Q(s) |_{s=-a_i} = 0,\forall i=1,...,f \label{ys_jouken2}
\end{equation}
全てのについて条件を満たすことで有限時間整定を実現することができます。
この条件を満たす信号のラプラス変換は有限区間の積分で表現でき、有限ラプラス変換と呼ばれます。
一旦、制御を抜きにして整定する例をみてみましょう。例えば、を次のように与える場合を考えます。
\begin{equation}
Q(s) = \frac{1}{s+1}-\frac{K}{s+1}e^{-s}\label{kal}
\end{equation}
このとき、が 1 秒で整定するためには、とすればよいです。実際、の波形は次のように求まります。図より、時刻1秒以降はゼロとなっていることが確認できます。
ステップ目標値への追従
この手法を踏まえて、制御対象を設定し、有限整定させる制御器を設計してみます。
制御対象がと与えられる場合を考えます。このとき、ステップ目標値信号はで与えられます。ここで、制御器としてを設計する.ここで,整定させる有限時刻をとすると、制御器で設定するむだ時間長さはとなります。
およびの構造を次のように与えます。
\begin{equation}
C_1(s) = K_1\frac{s+1}{0.5s+1}, C_2(s) = K_2\frac{s+1}{0.5s+1}e^{-s}
\end{equation}
このとき,およびを連立して解くことで係数が得られ,得られた値を用いてシミュレーションすると次の図が得られます。
ステップ目標値に時刻1秒以後一致していることが確認できます。
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自己紹介
岡島 寛 (熊本大学工学部情報電気工学科准教授)
制御工学の研究をしています。モデル誤差抑制補償器,状態推定,量子化制御など
研究室HP
岡島寛 (システム制御 control-theory.com)
English Web Page
Hiroshi Okajima (Control Engineering control-theory.com)
制御動画ポータルサイト
制御工学チャンネル(伝達関数・状態方程式・MATLABなど)
電気動画ポータルサイト
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