制御工学ブログ

制御工学の研究者を20年やっている国立大学教員が制御工学の基礎から専門まで広く説明します。記事内では、動画やMATLABコードを交えながらわかりやすく解説する方針です。制御工学チャンネル(YouTube,動画ポータル)を運営しています。

フィルタによる信号処理【ローパス・ハイパス】電気回路論

この記事では信号処理に用いるフィルタについてまとめます。電気回路や信号処理におけるノイズ除去など様々な分野でフィルタが利用されます。フィルタに関する説明動画は最下部に置いています。

 

一般的なフィルタについて

以降ではフィルタによる信号処理について説明します。フィルタには様々な種類があります。例えば、流体中に混ざった固体や異物を取り除く装置、ろ紙を使用したものがろ過器であり、これは英語でフィルタ(filter)と呼びます。また電子メールフィルタではウィルスメールやスパムメールなど不要なメールを判別して隔離するといった形で処理がされます。これもフィルタと呼びます。

この記事では電気フィルタやデジタル回路、フィルタ回路、デジタルフィルタといったような、信号のうち、必要な周波数の信号を強めたりいらない成分を除去したりするような信号フィルタについて説明をしていきたいと思います。

フィルタの身近なケースとしては主に信号処理が上げられ、音声信号に含まれる雑音を除去する場合や、センサに含まれるノイズの除去、電源の安定化や交流信号から直流信号を生成する際の信号のスムージングなどのために用いられます。フィルタの種類として主に以下の4つが挙げられます。

  • ローパスフィルタ
  • ハイパスフィルタ
  • バンドパスフィルタ
  • 帯域阻止フィルタ

以降では、個々のフィルタについて説明をしていきます。

フィルタの入出力

フィルタ特性の周波数プロット

次にフィルタの周波数特性表示について説明します。フィルタへの入力信号と出力信号との比を信号の周波数成分ごとにプロットしたものがゲイン線図と呼ばれる図になります。横軸に角周波数([tex \omega])、縦軸にゲインをとったグラフになります。ゲインとは入力と出力の比の絶対値になります。減衰特性を用いた表現もあります。減衰特性はゲイン線図と逆であり、ゲイン線図と図の見方が変わるので、注意する必要があります。

ここでフィルタのゲイン線図によって、ある周波数の信号に対してどれだけの入出力比になっているか、別の周波数ではどの入出力比になっているか、ということを知ることができます。

フィルタのゲイン特性

ローパスフィルタ

ローパスフィルタは、最もよく使われるフィルタの一つです。低域通過フィルタとも呼びます。ローパスフィルタは低周波域の信号、すなわち、遅い信号成分を通過させるフィルタであり、高い周波数の成分を遮断するといった役割を持つフィルタです。図の左が入力、右が出力です。高周波の信号成分がローパスフィルタにより除去されていることがわかります。一般にセンサに重畳する高周波信号はノイズであることからノイズ除去にローパスフィルタが用いられます。

ローパスフィルタ

ローパスフィルタのRCによる構成を以下に示します。ただし、解放電圧について成り立つ点に注意してください。

ローパスフィルタのRCによる構成例

ここで、遮断周波数は 1/RCと求まります。この他、熱消費しないコンデンサCおよびコイルLからなるLCフィルタがローパスフィルタ(その他フィルタも)の構成のための使用されます。フィルタの遮断性能はフィルタの組み方で様々に存在しますが、有名なところでバターワースフィルタ(Butterworth filter)やチェビシェフフィルタ(Chebyshev filter)が挙げられます。

ハイパスフィルタ

また逆にハイパスフィルタでは低い周波数の信号を阻止し、高い周波数の早い信号を

通過させるといった役割を持ちます。高域通過フィルタとも呼びます。

ハイパスフィルタ

ハイパスフィルタのRCによる構成を以下に示します。ただし、ローパスフィルタの場合と同様に解放電圧について成り立つ点に注意してください。

ハイパスフィルタのRCによる構成例

ここで、ローパスフィルタの場合と同様に遮断周波数は 1/RCと求まります。

バンドパスフィルタ

バンドパスフィルタでは、ある特定の周波数帯の信号を通過させ、高周波と低周波の信号を遮断します。このフィルタは、例えば、ハイパスフィルタとローパスフィルタの縦続接続により実現することができます。帯域通過フィルタとも呼びます。

バンドパスフィルタのLPFとHPFによる構成

帯域阻止フィルタ

帯域阻止(バンドエリミネーション)フィルタでは、ある特定の周波数帯の信号を阻止し、高周波と低周波の信号を通過させます。このフィルタは、例えば、ハイパスフィルタとローパスフィルタの直列接続により実現することができます。

 

帯域阻止フィルタのHPFとLPFによる構成

フィルタの設計手法

フィルタの設計には、例えば、LC回路を用いたチェビシェフフィルタ設計やバターワースフィルタ設計などがあります。次数を上げると特性も変わります。

フィルタの利用例

フィルタの利用例です。例えばスピーカーではマイクにおいてハイパスフィルタを用いて20ヘルツ以下の信号を除去します。そして広帯域で信号増幅するというのが難しい場合にはハイパスフィルタローパスフィルタを用いて、マイクから出た音声信号を周波数ごとに分離します。分離した上で各周波数信号ごとで増幅するという処理がなされます。このような形でハイパスフィルタやローパスフィルタが用いられています。

ここまで、フィルタの種類や特徴、利用例などについて述べました。フィルタの説明は以上です。

フィルタに関する関連動画

フィルタに関する動画は以下の通りです。まず、フィルタによる信号処理の動画があり、それに加えて、周波数特性(ボード線図)の読み方に関する説明動画があります。これ以外にも、伝達関数に関する動画などが関連してきます。

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自己紹介

岡島 寛 (熊本大学工学部情報電気工学科准教授)

制御工学の研究をしています。モデル誤差抑制補償器,状態推定,量子化制御など

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