制御工学ブログ

制御工学の研究者を20年やっている国立大学教員が制御工学の基礎から専門まで広く説明します。記事内では、動画やMATLABコードを交えながらわかりやすく解説します。伝達関数・状態方程式に基づく制御,制御理論など。制御工学チャンネル(YouTube,動画ポータル)を運営しています。

学術論文の掲載『マルチレート計測環境下でのシステム同定』

Journal of Robotics and Mechatronicsに論文が掲載されました。タイトルは以下の通りです。

タイトル:System Identification Under Mult-irate Sensing Environments

日本語タイトル:マルチレート計測環境下でのシステム同定

論文リンク(PDF無料)JRM Vol.37 p.1102 (2025) | Fuji Technology Press: academic journal publisher

これまで、81本の論文が掲載されております。特にこの論文が、筆頭著者もしくは単独著者としての50本目の論文になります。節目というよりは、100本まで行くことはないので、よい区切りであると考えています。

論文の内容ですが、マルチレート系という、観測出力と入力の周期が異なる系に対して数理モデル化を試みる内容になっています。通常は、入力と出力のペアは一定のサンプリング間隔で同時に値を知っているものとしてモデリングを行いますが、マルチレート環境下でモデリングをするための手法を提案した論文となっています。

近年の制御システムでは、多様な機能を持つ複数のセンサが組み込まれることが一般的です。これらのセンサは種類によってサンプリング周期が異なるため、入力と出力のデータに欠損値が生じる状況でのシステム同定が必要となります。特に移動ロボット制御においては、LiDAR、カメラ、IMUなど異なるサンプリング能力を持つセンサを統合したモデルベース制御の実現が重要課題となっており、そのための数理モデルの推定は必須事項です。

従来研究では、周期信号を用いることでマルチレート系の同定を行う方法や、リフティングに基づく方法などが扱われていますが、元の対象パラメータを導出するという点に立つと不十分な成果でした。これを、サイクリングという手法をベースに解決したのが本研究になります。

共著者は、松永先生とOGの古川さんです。2021年に関連研究をスタートしてからシステム同定関連の論文は2本目になります。

提案手法の基本的な同定手順は次の図の通りになります。詳しくは、オープンアクセス論文として掲載されている論文リンクをご覧ください。

マルチレートシステム同定の手順

www.fujipress.jp