2025年10月1日、熊本城ホールにて第376回RISTフォーラムが開催されました。「制御工学分野の実践的教育への取り組み」をテーマに、教育現場から企業まで幅広い分野で活躍される2名の専門家をお迎えし、制御工学教育の最前線について活発な議論が交わされました。
開催概要
日時: 2025年10月1日(水)14:30~17:00
場所: 熊本城ホール会議室C1、C2
主催: くまもと技術革新・融合研究会(RIST)、(公財)くまもと産業支援財団
RIST会長の松永信智教授(熊本大学大学院先端科学研究部)の開会挨拶に始まり、2つの講演と質疑応答、そして交流会という充実したプログラムで実施されました。
講演内容
講演1: LEGO×Arduino×Simulinkで学ぶ実践的制御工学
川田昌克教授(福岡工業大学)
川田教授からは、「MATLAB/Simulink + Arduino + LEGOを利用した『制御工学』の実践教育」と題し、画期的な教材開発の取り組みについてご紹介いただきました。
講演の主なポイント:
制御工学は「数式を駆使して自在にモノを操る」学問ですが、数式中心の学習では実感が得にくいという課題があります。この問題を解決するため、川田教授が開発されたのが、特殊な機械加工を必要としないLEGO部品と汎用モータ・センサを組み合わせた教材です。
ArduinoとMATLAB/Simulinkを活用することで、リアルタイム計測やコントローラ実装が簡単に行えるよう設計されています。大学・高専での豊富な活用事例を通じて、PID制御や信号処理、現代制御まで幅広い内容を実践的に学べることが示されました。
個人的には、制御工学の講義を受ける前に制御の実験をしている(カリキュラムの関係で)というのが興味深かったです。回転型倒立振子の実験を現地でされましたが、あまりにも綺麗に実験ができて、驚きの声も挙がらないという、なかなかのものがみれました。(普通、頑張って制御ができたら驚きの声がでますが、すんなり非常に高度な制御ができていました。)

講演2: 専門知からトランスファラブルスキルへ
南裕樹教授(兵庫県立大学)
南教授からは、「制御というリテラシー:専門知から広がるトランスファラブルスキル」と題し、制御教育の進化と今後の展望についてお話しいただきました。
講演の主なポイント:
制御工学をより効率的かつ効果的に教育する方法は、実学界において継続的に模索されてきました。この四半世紀の間に、ツールの多様化や実験・オンライン教材の普及が進み、教育環境は大きく進化しています。
特に印象的だったのは、制御工学がもはや工学部の専門科目にとどまらず、異分野の学生や研究者、さらには初等中等教育にまでその対象が広がりつつあるという指摘です。「専門知」としての制御工学が、分野横断的に活用可能な「トランスファラブルスキル」へと展開していく現状を踏まえ、次世代の人材育成において制御教育が果たすべき役割について深い考察が示されました。
個人的に、南先生とは共著だったり色々なところで関わっているので考え方は知っていますが、後から松永先生に話を聞くと新鮮で面白かったと言ってました。

閉会挨拶は、RIST企画委員長の伊賀崎伴彦教授(熊本大学大学院先端科学研究部)が務められました。